小さな旅籠。張り出した錆び付いた腕木の上に、ちょん切られたイノシシの首が、周囲の白布を血に染めている絵の描かれたボロボロの木の看板がかかったお店。1階のバーは、みすぼらしくひどく汚い。ヤギのようなきつい臭いがする。出窓はべっとりと煤けて、陽の光がほとんど射し込まない。ざらざらした木のテーブルで、ちびた蝋燭が部屋を照らしている。一見土間に見える床は、実は何世紀も積もり積もった埃が覆っている石床。客は、包帯やフードなどで顔を隠すのがしきたり。店主は、何だか見覚えのある、長い白髪に顎髭をぼうぼうに伸ばした、痩せて背が高い爺さん。